今回からは暫く金融資産運用についての解説をしていきます。

資産を築くためには運用は非常に大切ですが、通常の教育環境では全く触れずに社会人になってしまいます。

多少のリスクを負ってでも資産運用はすべきです。FPとしてもそれは勧めるべきでしょう。しかし、年齢が高くなればなるにつれ、取れるリスクは減少します。

したがって、できる限り若いころから長期間取り組むよう伝えるために、しっかりと学びましょう。

基礎知識編

FP試験ではあまり金融商品については詳しく触れません。しかしながら、実務的には非常に重要な項目です。節税とも無関係ではありません。これらの金融商品の特徴を理解し、説明するためには金融の基礎を学ぶ必要があります。

まずは、基礎から見ていきましょう。

金利

金利とは元本に対して一定期間の間につく利息の値を示します。1年間に1度付く利息を年利、月1回を月利と呼びます。中には1年間に2回つくけどその合計値を年利と表現することもあります。

年利1%といったら一年間で1%の利息がもらえます。

ここで考えなくてはならないのは単利複利です。

単利とは預けた元本に対してのみ利息が付くシステムです。年利1%で10年預けた時10%の利息が得られます。

一方、複利では1年目の利息分を含めた金額に2年目の利息を得ることができます。同様に3年目には1年目と2年目の利息ものせた額に対して3年目の利息が得られます。したがって年利1%で10年預けた場合は10.46%の利息が得られます。

年利1%で10年だと差はたったの0.46%ですが50年後はどうでしょうか。単利だと利息は50%ですね。

では複利だとどうなるでしょうか?利息は64.46%になります!単利の場合に比べて14年分も多く利息が付きます。

複利では単利よりも長期間になればなるほど元利合計額が大きくなっていきます。この効果を複利効果とよびます。これがとにかく早く始めて長く投資するべきであるといわれるゆえんです。

ここまでは利息に関して考えてきましたが、年平均利回りという考え方もあります。

単利で年利1%の場合と複利で年利1%の場合は年利は同じですが、結果が違いましたね。複利のほうは10年で10.46%でした。

10年間預けることがわかっている場合、10年間預けていて1年あたりの利率を考えようと思ったら10年後の元利合計額から利率を計算し、それを10で割ることで年平均利回りが計算できます。この場合ですと年利1%複利の10年後の年平均利回りは1.046%になります。

さて、ここまでは金利の計算方法をみましたが、世の中には10年間ずっと1%でやっていけるものとそうでないものがあります。金利の種類を別の観点で見てみましょう。

  • 固定金利:預入時に決定している金利が満期まで変更されないもの。金利が下降している局面では有利となる。
  • 変動金利:その時々の金利水準に合わせて、預け入れから満期までの間で定期的に金利が見直されるもの。金利が上昇している際には有利となる。

次に経済の基礎を見ていきましょう。

経済の基礎

FP試験でとわれる経済の基礎について見ていきましょう。

GDP(Gross Domestic Product:国内総生産)

GDPは社会の授業で習っていると思いますが、ざっくりいうと一定期間内に生み出された付加価値のことです。付加価値とはサービスなども含まれます。

GDPが大きければ、それだけ大きな規模の生産があったということなので、GDPは経済規模の指標となります。

経済は以下の3つに分けることができます。

経済の構成
  • 生産:企業などの生産活動によって生まれる付加価値
  • 支出:設備投資や、家庭での消費
  • 分配:給料や企業の利益

これら3つの数値は互いに等しく、三面等価の原則と呼ばれています。

経済はGDP以外にも、ものさしがあります。経済指標と呼ばれ、FP試験でも頻出項目です。

以下のようなものがあります。

経済指標
  • 景気動向指数
  • 日銀短観(企業短期経済観測調査)
  • 物価指数

それぞれの特徴を見ていきましょう。

景気動向指数

景気動向指数とは内閣府が毎月発表しており、生産や雇用などの様々な結果を示します。この指標をもって、現状の把握や、将来どのような経済状態になるかを予測するのに用いられます。

指標には先行・一致・遅行の指標があります。それぞれの指標は実際の経済に対して先行するのか一致するのか遅行するのかによって異なります。例えば失業率は景気が悪化してから目立つようになるので、遅行系列に含まれる指標です。一方、実質機械受注などは、生産がこれから伸びてくると予想される生産機械の増加の指標であるため、実際の経済に先行して上昇するため、先行系列の指標となります。

景気局面を把握するディフュージョン・インデックス(DI)と景気動向を量的に把握することを目的としたコンポジット・インデックス(CI)のふたつがある。DIは経済拡大している指数がどの程度の割合化を示すもので、経済指標のすべてが拡大を示していれば100%となる。CIは例えば前年比等で変化率を示すものである。

  • 先行系列:マネーストック、東証株価指数、工業用生産財在庫率指数、実質機械受注、新設住宅着工床面積、消費者態度指数など
  • 一致系列:生産指数、鉱工業生産財出荷指数、大口電力使用量、稼働率指数、商業販売額、有効求人倍率など
  • 遅行系列:家計消費支出、法人税収入、完全失業率、最終需要財在庫指数など

日銀短観

日銀短観は企業短期経済観測調査のことで、日本銀行が企業の経営者に対してアンケート調査をしたものです。調査は3月おきに行われ3・6・9・12月に行われます。注目度の高い指数となります。中でも業況判断DIは主要な企業の景気の実感を表しているとされます。業況判断DIは以下のように計算されます。

業況判断DI

景気が良いと答えた企業 ー 景気が悪いと答えた企業

単純に0以上なら景気が良いと判断され、値が上昇傾向にあれば経済が活性化してきていると判断できます。

物価指数

物価指数には2種類あります。企業と消費者の指数です。詳細は以下に示します。

  • 企業物価指数:企業間取引される商品の価格変動に対する指数。日銀が毎月発表している。
  • 消費者物価指数:消費者が購入するモノ・サービスの価格変動に対する指数。総務省が毎月発表している。

指標を受けて日本の中央銀行である日銀は金融政策をとります。

金融政策

主な介入方法としては、金利や通貨供給量を調節することで行われます。物価の安定や長期の経済成長をはかることが目的です。金融政策の方針は政策委員会による金融政策決定会合で決まります。

また、金融政策は過剰なインフレ、デフレを回避するために行われます。

  • インフレ:インフレーションの略で、物価が持続的に上昇し、貨幣価値が減少している状態。貨幣流通量が増えて相対的貨幣価値の減少が起こる。またはその反対に物が減少し物価の上昇によって相対的に貨幣価値が減少する。
  • デフレ:デフレーションの略で物価の持続的な下落が起こる。インフレの反対の状態である。

実際に日銀が操作する方法は支払準備率操作公開市場操作です。

支払準備率操作

民間の銀行の預金残高に応じて日銀に無利子で預けなくてはならない額を操作することです。値が上がると、日銀に金が集まり、市場からは減少します。すなわち金利が上昇します。

反対に支払準備率が減少すると、日銀からお金が出ていくことになりますので、市場に金が回り金利が下がります。

公開市場操作

日本銀行が金融機関に対して国債などを売買することで金融市場のお金の流通量を調節することです。日銀が何かを買って市場のお金を増やすことを買いオペレーション(買いオペ)、反対に日銀が何かを売って市場のお金を吸収した場合には売りオペレーション(売りオペ)と呼ばれます。

支払準備率の場合と同様、市場にお金が増えれば金利が上がり(売りオペ)、反対に市場のお金が減れば金利が下がります(買いオペ)。

金利は様々な要因によって変動します。

長期金利が上昇するのは、国内景気が好況、物価高、円安、海外金利上昇です。

反対に長期金利が減少するのは、不況、デフレ、円高、海外金利低下です。

以上で金融知識基礎編を終了します。

次回からは実際の金融商品について見ていきます。

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